
オーストラリア姉妹湿地公式訪問団と関東視察レポート
期 間:11月2日(金)〜11日(日)
視察先:オーストラリア ハンター河口湿地、クーラガング湿地 姉妹都市交流(ポートスティーブンス、ニューキャッスル) 関東 埼玉県新座市、東京都新宿区、千葉県柏市、千葉市
目 的:オオジシギの往来が縁となって提携した姉妹湿地を訪問し再生事業を学ぶとともに、市長、市民、議員が一体となった公式訪問団88名での訪問によるニューキャッスル市、ポートスティーブンス市との人的な交流。 関東近辺の自治体などの先進事例を学ぶ。
11月2日(金) 移動日 移動日、釧路空港での出発式の後、羽田、成田。機内泊にてシドニーへ向かう。 私が下調べをした情報によりますと、オーストラリアでは現在自由党のハワード政権が10年間政権を握っており、市場原理と民間活力を導入した政策により、高度な経済成長を維持しているのと同時に労働党が作った政府の負債をすべて返済し、先進国では稀に見る無借金経営の国です。日本とは正反対に公共投資に頼らない、スモールガバメント政策によって急激に成長を続けている国といえます。実際に私が8年前にオーストラリアで働いていた当時は1オーストラリアドル80円ほどでしたが、今回は110円にまでなっていました。広大な国土を背景に地下資源や農業にも恵まれており、この点が日本とのEPA交渉などの際に優位性を保っているポイントです。ただ、環境面では個人の浪費と機械化の影響からか一人当たりの二酸化炭素排出量は日本の2倍となっており、アメリカについで世界ワースト2位です。この国の成長を止めるかもしれない唯一の要素は、地球温暖化による渇水と砂漠化だと私は思います。
11月3日(土) ホームステイ先へ 現地時間10時ごろに入国。シドニーと日本の時差は1時間であるが、夏場にサマータイムを導入しており、この時期は時差2時間。シドニーへ移動し、オペラハウスをバックに写真を撮りに行き、昼食後にポートスティーブンスへ移動。夕方に到着し、ホームステイ先の家族を含めた受け入れの方々と一緒に会食し、そのままホームステイ先へ。かなりハードなスケジュール。ホームステイ先にて明日の予定を話し合い、就寝。
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ジャカランダが花盛り 日本で言う桜でしょうか、きれいでした。 |
ダートンさん一家と。 オーストラリアは女性が強いようです。 |
11月4日(日) ホストファミリーとの交流 ぐっすりと眠り、遅い朝とともに出発。私は道新の記者である村田さんと一緒で、村田さんはいろいろなことを取材しもって帰りたいという考えで、私は時間の許す限り現地の事例を見聞してまわりたい、という考えでしたので行動を共にする相手に恵まれたな、と感じました。前日の打ち合わせで、お願いしていたのは、ウェットランド(湿原)とオーストラリアの先住民族アボリジニとのつながり、ということに焦点をしぼってホストファミリーにお願いしたのですが、何件か電話や地元のインフォメーションセンターを訪ねて聞いてはみたのものの、発見することはできませんでした。ホストファミリーは家族4人と息子の彼女の5人全員で来てくれたのですが、一緒に楽しもうとして来ているその五人にこれ以上迷惑をかけることもできず、その後ファミリーパークのようなところに一緒に行きました。オーストラリアはすごいですね〜、餌を持って動物たちのところをまわるのですが、ラクダなんかにも直接餌を手で与えることができたり、カンガルーの袋の中から出ている子供の脚を触ったりすることもできて、子供たちなら多くのことを学べるところだな〜、と感じましたし、33歳の私ですら感動してしまいました。ただ、日本では動物に引っかかれただけでも訴訟問題になりますから、こういった動物園が存在しえないことが本当に残念に思います。その後、レストランに行き、厚さ3cm近くあるであろうステーキを食べました。少し胸焼けしましたが、これもいい経験です。最後は夜の港桟橋に夜景を見に行きましたが、なんとなく最後は家族団らんに一緒についていっているような気分になりました。余談ですが、オーストラリアでは女性が働いて男性が家事をするという家庭が結構多いそうです。私のお世話になったご家族もそうで、奥さんのロビンさんは薬剤師として薬局を経営し、家族内での意思決定もしていました。ご主人のクライブさんは朝から家事を担当していました。息子2人も性格が優しく、女性に親切でした。その関係にオーストラリアでは全く違和感がないように思います。そういった意味で、オーストラリアのハズバンド、ワイフという言葉と日本のご主人、奥さんという言葉には大きな違いがあると感じました。強い女性には過ごしやすい国でしょう。 気力体力を使った分だけ得るものも多かったホームステイでした。
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フワフワのコアラと一緒に記念撮影。 ぐっすり眠ってました |
偶然見つけたアースケアパーク 自生する植物をボランティアが護っている場所です |
11月5日(月) 表敬訪問と湿地再生事業視察 ホームステイ先を後にし、みんなでポートスティーブンス市役所を表敬訪問。あいにく市長は新婚さんだそうで、ハネムーン中で不在でしたが、代わりに副市長と議会のみなさんが出迎えてくれました。オーストラリアでは各自治体によって議会制度が違いますが、ポートスティーブンス市では議員は12箇所ある各コミュニティー(町内会のようなもの)の中から一人選ばれ、その12人の議員の中から市長が選ばれるという仕組みになっています。日本の国会で行われている議院内閣制に近いものでしょうか。その後ニューキャッスル市役所を表敬訪問し、タウンホールや議場を見学したあと市長が出迎えてくれました。ここの町は人口20万人で、ポートスティーブンスよりも大きく、総人口が2000万人弱のオーストラリアの中では大きいほうの都市でした。人口同様、釧路と共通点も多く、河口流域に湿原が広がり、石炭も多く産出する輸出港で、オーストラリア開拓当初の町並みを保存しながら残しています。議会においては市長も議員も市民の直接投票で選ばれますが、議員は12人で釧路の約3分の1の人数でした。ホストファミリーが言っていましたが、公共事業や都市計画などは市民の意見によって変更されることもあり、民意がよく反映されている、とのことです。住民団体や企業も市議会で発言することを許されており、今回再生事業の説明をしてくれたパラダイス博士も何度か議会で発言し、自然再生に対する予算を獲得した、と言っていました。少ない議員数でもやり方はあるものだと感じました。昇る国の議会制度ですね。
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ポートスィーブンス市役所にて。 挨拶をする伊東市長 |
ニューキャッスル市役所 議事堂のそばにて記念撮影 |
昼食後、ハンターウェットランドセンターに行き、再生中の湿地を見学しました。以前はラグビー場だったところに企業からの資金提供を受けて湿地を再生しているところということで、私の想像とは違い、オーストラリアの割には狭い敷地でした。ここは実験的な場所であると私は解釈しました。ただ、制度としては企業が社会貢献とPRのため湿地再生事業に資金提供し、200人以上の近隣の住民などもボランティアとして参加しお金も出しているということと政府の機関ではなく民間でセンターを施設整備し運営しているということを聞いて、意識の面ではオーストラリアが進んでいる部分もあるのかな、と感じました。その後、クーラガング湿地再生事業の現場を視察しました。そこは河口にある中州で、以前は酪農家がそこで酪農を営んでいましたが、辞めて引っ越したので、その家屋ごと買い上げてセンターにし、市民の手で家屋の修繕から木道の整備までしているところでした。環境としては海と川の合流点であり、マングローブの広がる湿地で土中の塩分濃度が高く、特殊で貴重な動植物が生息する場所です。マングローブの葉をなめるとしょっぱく、それは地中の塩分を葉から吐き出しているからだそうです。その働きによって地下水は真水だそうです。自然というのは本当にすばらしい。その中州の中では牛も飼われており、農業と湿地の共存がどうすればうまくいくか、という実験を行っているということでした。資金を集めながら市民の手で自然再生、まだまだ芽は小さいですがすばらしい取り組みで、日本でもうまく制度化できないものかと感じました。 ホテルについてから、前もって会う約束をしていたアボリジニのケリーさんに村田君と二人でお会いし、アボリジニと湿原の関わりや取り組み、考え方などについてお伺いしました。湿原再生事業はアボリジニの方にも意見を伺いながら進めているそうですが、政府はアボリジニの意見を聞こうとはせず、優遇するような政策によりアボリジニの人々を腐らせている、と言っていました。また、ケリーさんはアボリジニの考え方について話してくれましたが、その中で「我々は大地の一部で大地とつながり、自然は我々の故郷だ。」と言っていました。資本主義が作り出した土地の所有権を言っているのではなく、広い意味で人間と自然とのつながりを信じ、大地は自分たち自身だ、という意味だと私は解釈しました。私はアイヌのエカシたちの話を聞いたことがあり、この考えと共通点があったので理解することができました。本当にすばらしい自然との共生というか、人間は自然の一部という考え方だと思います。「ただ、最近ではアボリジニの人々も経済社会の中にどっぷりとつかりその思想を忘れてしまった人が多い。自然と一体となって生きるには強い精神を保たなくてはいけないが、人間は弱い方向へ向かってしまう。」と言っていました。私はこの考えに思わず涙ぐんでしまいました。人間は文明によってその精神のみならず、その住める環境すらも失おうとしている。人間はこのアボリジニの思想から学ぶべきことが多い、と私は感じました。 夕方からニューキャッスル市内にて市民訪問団全員と姉妹湿地周辺地域の方々との交流会が行われました。楽しく出し物を楽しんだ後、最後はみんなで輪を作り北海盆踊りで締めました。国が違う姉妹都市との関係であるからこそ心と心がのふれあいが一番大切ですね。
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ハンターウェットランドセンター 再生事業は山あり谷ありだそうです。 |
視察団に説明してくれたパラダイス博士。研究だけでなく議会での説明もこなします。 |
11月6日(火) 州議事堂見学 朝ホテルを出発しシドニーへ。午後からは各自自由行動で、大半が市内観光などのオプショナルツアーに参加しました。私は市役所担当課のみなさんと一緒にニューサウスウェールズ州の州議会を見学に行きました。州議会では議論の真っ最中で、与党側と野党側で激しい議論が交わされていました。日本では与党側の答弁は謝ってばっかりのような感じですが、こちらではかなり挑発的な答弁もあり、なかなかすごい迫力でした。議会には上院と下院があり、上院は元老院のようなところで、慣例であまり決定権はなく、下院は選挙で選ばれた議員で構成し決定権を持っています。議事堂内はポートスティーブンス市で元市長を務めていたボーマンさんが案内してくれました。控え室みたいなところで、ちょうどこの日に行われた国民的な行事のメルボルンカップという競馬のレースの中継を見ました。この時は議会もストップして中継を見るそうです。日本でやったらマスコミにすぐたたかれますね。 その後はつかの間の自由時間。私もやっとおみやげを買えました。
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交流会での一枚。 釧路市国際ボランティアの会のお二人と私のホストファミリーのクライブさん |
議事堂の中の控え室で記念撮影 下院議員のボーマンさん、親切でした。 |
11月7日(水) 帰国 朝シドニーのホテルを出発。夕方成田に着き、品川に宿泊しました。帰ってきた〜。
11月8日(木) 埼玉県新座市役所視察訪問 私だけ一行と別れ、埼玉県の新座市役所に新しくできた育児休業制度を学びに行きました。この制度は男女共同参画の観点から、二人とも職員である夫婦に子供ができた場合、夫と妻が一週間交代で育児休暇を取得できるという制度です。一般的に育児休業中は給料が支払われず、その期間は昇進にも影響するため、男性の育児休業は取るのが非常に難しいのが現状ですが、この制度ならば、給料は半分になりますが、昇給には影響しないそうです。まだ始まって1年足らずということで、まだ女性のほうが育児休暇を取るケースがほとんどで、この制度取得者は1組しか実例がなかったのですが、取得した職員の感想によると、「これまでとは異なる視点を獲得し、日常業務に広がりができた。」とのことでした。男性が育児に参加すれば出生率が上がるといわれています。この制度が広がれば、出生率向上に寄与するのかとも思いますが、まだまだいろいろな制度改正と周辺環境の整備が必要ですね。
11月9日(金) 新宿仕事センターと柏市役所視察訪問 午前中に新宿歌舞伎町の歓楽街にある、障がい者の就労支援アンテナショップである「仕事センター」に行ってきました。このショップは新宿区が空き店舗対策事業の一環として、空き店舗にならないような場所ではありますが、借り上げて障がい者支援の法人に無償で貸しています。ショップはボランティアと障がい者によって運営され、各地の特産品を仕入れてアンテナショップになり販売していました。有償の市民ボランティアは市が募集しているそうです。この施設はすばらしい、みんなウィンウィンの関係です。特産品を納入している自治体などは都心のど真ん中で安価に地元をPRできるし、障がい者は自立して働くための経験ができ、家族からも感謝されているという。また、新宿区としても殺伐として治安の悪い歌舞伎町周辺の雰囲気を改善することができる。いいこと考えたな〜、と感じました。こういうショップ釧路の北大通りでもできないでしょうか。 午後に千葉県柏市役所に行って、地球温暖化対策条例についてお伺いしてきました。この条例は全国で京都市についで2番目のもので、他都市の環境条例と違い、条例に数値目標が盛り込まれています。また、京都市の条例よりも一歩進めて、大型の施設建設に対して計画段階で条例に適合する範囲かどうかで建設許可を出せる、言い換えれば、適合しないものに関しては建設を防ぐことができる、という許可権限が付与されています。数値目標としては、京都議定書にならい、1990年比で6%、2015年には10%の温室効果ガスの削減を挙げています。こういった条例は今後全国的な広がりを見せるであろうと私は思います。釧路でも早急に条例化できるよう議会で発言していきたいと思います。
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障がい者自立支援のための アンテナショップふらっと新宿 |
柏市役所近くの禁煙区域の看板 さすが先進自治体は違いますね。 |
11月10日(土) 地震防災に関するフォーラム 千葉市で行われた、千葉県が主催する地震防災に関するフォーラムに出席してきました。フォーラムの中では、午前中に「減災と防災教育」というテーマで講演が行われ、災害発生時の人間の行動パターンをもとに、どのようにパニックを防ぐか、子供への教育がいかに大事かについて学びました。午後には「阪神・淡路大震災の被災体験などを通して防災教育を考える」というテーマで講演が行われ、実際に震災の際に避難所となった学校の教員のお話をお聞きすることができました。その講演の中で、「行政は震災直後は頼りにならない。住民がそのことに気付き団結して対処をすることが大切だ。」と言っていました。そのとおりですね。また、「実体験を経験していなければ防災教育に真剣に取り組まないが、繰り返し避難訓練などに取り組み行動パターンを覚えることは重要だ。」とも述べていました。震災を経験した人の話は一味違いますね。こんなことを言ったらおこられるかもしれませんが、震災は人を成長させる一番の教育ですね。
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地震防災に関するフォーラム 危機意識というものが日本には必要かも知れませんね。 |
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